Artist's commentary
喪失
先週、君の家へ誘われた時の事を思い出す。
私はてっきりいっしょに勉強する事が目的だと思っていたけど、
綺麗に片付けられた部屋に君の趣味とは思えない花の良い香りが漂っていたこと、
そして何より君の両親が旅行中だったということから私は君の本当の狙いを察した。
今日一線を越える。
具体的なことは何一つ思い浮かばなかったけど、そう考えただけで徐々に心臓が早鐘を打ち始める。
取り敢えずどうしていいのか分からなくて私は鞄からノートと参考書を取り出し机の上へ並べた。
頭の方に血が集まってきたのか耳がじんじんする。
たぶん今、私の顔は真っ赤だ。
そっと君の様子を伺ってみると君も私と全く同じだった。
勉強の用意をして赤くなった顔で机の上をじっと見ている。
だけどそこで二人共固まってしまった。
まるで時間が止まってしまったかのようだ。
もっとあっちの方の勉強もしておけば良かった。
どうやって君を受け入れればいいのだろう。
君は優しくて真面目だから私を押し倒すなんてことはしない。
私だっていきなり君に擦り寄っていくなんて出来そうもない。
様々な考えが頭のなかを走り回るが一向に答えが出てこない。
どれくらいの沈黙が続いただろうか、唐突に君が笑い始めた。
私もつられて笑い出す。
客観的に見ればなんて滑稽な図なんだろう。
慣れないことはするもんじゃないな、と言っておどける君は死地から生還した兵士のような面持ちだった。
きっと私も同じような表情をしているだろう。
一息ついた後、お互いノートを開きペンをとる。
いつもの君の部屋。
心残りはあるけれど、私たちには私たちのペースがある。
大丈夫、私たちはまだまだこれからなんだから。
次はもっと自然にそういう風になれる。
私はそう信じていた。
男が人差し指と中指を擦り合わす。
乳房を掴んだその指の間で乳首がえも言われぬ形に変形している。
何度目かの背筋への通電。
過去の記憶が薄れてゆく。
男が自身の歪な棒を掴み私の開かれた股の間へ割り込む。
小さな水音と同時にさっきまでとは違う電流が全身を駆け巡る。
熱くて硬い棒が秘所の入り口を上下になぞり始めたのだ。
歯を食いしばらないと耐えられないほどの感覚。
ほんの少しずつだが男との距離が詰まり、なぞる力が強くなっていく。
仰向けになっている机を爪で掻きむしりたくなる衝動に駆られる。
ついに奥へとつながる道の入口に巨大なその先端がめり込み始める。
体が痺れて言うことをきかない。
何かが乙女の証に触れる。
恐怖と嫌悪感が滲みでるが、私の秘所はご馳走を目の前にした口元のように涎を溢れさせる。
受け入れる準備はすでに整っていた。
男が勢い良く腰突き出し、私のお尻と男の腰がくっつく。
何かが裂ける感覚と共にお腹の中が発火する。
意識を彼方まで飛ばしてしまう蕩けるような快感で腹筋が小刻みに緊張と弛緩を繰り返す。
さっきまで二人の間にあったあの逞しい一物が突然消失するという信じられない光景。
だけど私にははっきりと所在が分かる。
押し広げられた私の中が今まさに見えなくなった男の一部に吸い付いているから。
捧げてしまった…。
君ではなく、よく知りもしない男の人に…。
なのにどうしてこんなにも気持ちが良いのだろう。
罪悪感からか胸に鈍痛を覚えつつもそれを遥かに凌駕する快楽に、
私の心は君から”初めての人”へと傾いていった…。