Artist's commentary
「あのさ、穏乃……」
「灼さん、どうかしました?」「どうかしましたじゃないけど……ボウリングするのに丈の短いスカートはどうかと」「え?大丈夫ですよー!」「全然大丈夫じゃないし、さっきから丸見え……憧に見られたら大変」「どんなアングルでも絶対見えないから平気ですって!それより何で憧が見たら大変なんですか?」「理性のタガが外れて穏乃に襲い掛かるに決まってる。あれはケダモノだから」「そんな、みんな憧のこと誤解してますよ。憧はそんな人でなしじゃないですよ」「……逆に、なんで穏乃はそう思うの」「え?うーん、何となくですけど……幼馴染の勘というか」「穏乃は成長してないから分からないかな……穏乃以外にはバレバレにも程があるんだけど」「ん?何のことですか?」「穏乃は小学校のころから姿かたちが全然変わってない」「え?は、はい……いやでも少し身長伸びましたよ!」「それは誤差の範囲内だから……けど憧はかなり変わったよね」「うーん、色々伸びたくらいだと思いますけど」「どれだけアバウトなの……とにかく普通に見ると別人レベルに変わってるから……」「はぁ」「外見が変わると周囲だけじゃなく本人の内面にもフィードバックとして影響があるんだけど」「?そんなに性格とか変わってないと思うけどなー」「それは穏乃がそうであって欲しいと思ってるからだよ」「えっ?」「皆といつまでも一緒に楽しく遊んでいたいっていう気持ちが穏乃は強いから、自分に無意識に言い聞かせてるだけ」「そ、そうなんですか?」「インターハイで原村さんと麻雀をして遊びたいって、本心でそう思ってるのは穏乃だけだよ」「えっ!?そ、そんなことっ」「あるから。憧は穏乃をめちゃくちゃにしたいだけだから。麻雀部復活の際にしても憧にとっては打算しかないからね。阿知賀で麻雀やるってことは玄と共闘するだろうことは自明の理。そして玄との絆が深まるのを危惧した憧は遅れてきたヒーローを演出するというおまけ付きで妨害に入ったんだよ。玄にしたって二年間麻雀教室の掃除をしてたのはいつか穏乃が自分の巣に迷い込むのを虎視眈々と狙っていたからに他ならない。掃除当番が木曜日ってのもただの出まかせだしね。二年前の当番なんて普通に忘れてるし。ずっと一人で待ち続けていたと言えばかなり健気さアピール出来るし、穏乃が引っ掛かれば自分の思い通りに操ることも容易いからね……粘着質というか、まさに毒蜘蛛だよ、玄は」「ぇ……」「まあ憧の場合は穏乃に対する恋心自体は変わりないみたいだけど、欲望に忠実になってきてるのは素人目に見ても明らか」「え?恋心?え?」「穏乃と別の中学を選んだのは原村さんと仲良くなっていく穏乃に対して自分の存在をより意識させるため、穏乃に中学三年になるまでほとんど連絡しなかったのも同じく気を引くため。穏乃からの阿知賀に入る誘いを一度断ったのも駆け引きの一つ。一度断っておけば色々迷ったけど最終的に自分は穏乃のために阿知賀を選んでやったっていう恩を着せることができる……けど穏乃がまるで成長していないから子供騙しの好き避け戦法は見事に全部ご破算だったけどね……」「う、うーん???」「憧の成長スピードは内と外が相互に影響を及ぼし合っていたからだろうね……穏乃に女子として意識させるため、恋心が成長を助長していた……」「な、なるほどなるほどなるほどー???」「つまりは思春期状態ってことだよね」「おー、憧は噂の思春期なんですか?」「そう。あの成長ぶりから考えると相当性欲が上昇している。チャンスがあれば憧は確実に穏乃を犯しにくる」「あ、だからケダモノなんですね」「そう」「なるほど、えっ?」「それなのに穏乃は下着も着けずに短いスカートで卑猥に尻振って玉ころがしって、どう考えても私を誘t……一般的に見て襲ってくださいって言ってるのと同じことでしょ?」「そうかな」「穏乃はガードが紙すぎ」「え、そんなことないと思いますけど。山で鍛えてるしそんじょそこらの女子高生と一緒にしてもらっちゃ困りますよ」「物理的な防御力の話じゃなくて……それにそういうセリフが出てくる時点でザルだけどね」「?物理じゃないなら魔法防御力ですか、確かに今までそっちのステータスを上げたことはないですね……ていうかどうやって上げるんですか?」「いや魔法でも物理でもなくて、精神の話だよ……」「精神?やっぱり魔法防御力じゃないですか。ということは山で結構精神統一してるし魔法防御力も気付かないうちに上がってるのかも!」「どうでもいいよ……」「ご、ごめんなさい……」「仕方ない……一応同じ部に所属している者として憧が性犯罪者になるのは心苦しいから私が悪役を演じるしかない」「え?」「穏乃にトラウマを植え付ける……私以外に無防備な姿を晒さないように」「えっ?」「さっきから穏乃、私のこと誘ってるんでしょ?分かってる」「えっ」「体力無尽蔵とはいえ朝から投げっぱなしでもう50ゲームもやってるから身体は上気してる、非常に押し倒したい。これで誘ってないとか言ったら脳みそ入ってない」「そんな、別に普通ですよ?まだまだ投げられますよー!」「よし犯す」「へ?あ、灼さん!?」「大丈夫。穏乃が来た瞬間に閉店して、全ての出入り口封鎖してブラインドも下ろして防犯カメラも止めた。おばあちゃんも出てるんで店内には私と穏乃の二人しかいないから」「だから何か静かだったんですね!」「大丈夫でしょ?」「はい!……ん?何がですか?」「思えば穏乃と私は共有した時間がハルちゃん含め部の中で一番少ない」「確かに、そうですね」「それを今ここで覆す」「え、どうやってですか?」「さっきから言ってる。ここで穏乃を犯す」「えっ、そ、そんなことしたら」「何?」「灼さんのこと、嫌いになっちゃうかもしれませんよ……?」「構わない」「えっ?」「ハルちゃんが小鍛冶プロに麻雀で叩きのめされて安い自尊心をへし折られてトラウマを負ったことを思い出して」「えっと……」「忘れたくても忘れられないトラウマ」「はい……」「それって何よりも根強い記憶でしょ?」「はい」「麻雀をしていれば嫌でも思い出すんだよ」「……はい」「だから、私はここで穏乃を犯してトラウマを植え付ける」「え」「麻雀したりボウリングしたり、その制服の袖に腕を通す度に私のことを思い出すかもしれないでしょ?」「え」「共有した時間が一番短いなら、一番忘れられない記憶を植え付ければいいんだよ。それだけで穏乃の心は私で埋め尽くされるんだから」「あ、あのっ」「最初は穏乃の無防備を注意して憧を性犯罪者にさせないようにするだけのつもりだったけど、何か私が我慢できないから、ごめん穏乃」「最初はって……、さっき私が入ってきた時に誰もお店に入って来れない様にしたって言ってましたよねっ!?」「ん、気付いた?まあ憧がうんたらはただの建前だよ。本音としてはずっと穏乃とこうしたかったってだけ……憧や玄たちよりも良くしてあげるね」