Artist's commentary
【PFLS】ふたつめの鐘が鳴りました【謳華祭】
鐘の音とともに、男の手をひいて女が会場に入ってきました。
誰もが女のドレスに目を奪われたあと、男を見てぎょっとするのでした。
そんな周囲のざわめきも、女は全く意に介さず会場を歩いていきます。
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「あら、妹も来てるのね」
柱の影に隠れるようにして女は言いました。
「ねぇ、覚えてる?あなたの妹よ?」
女は振り返り壁際にたたずむ男を見ました。
男は無言のまま身動きひとつとりません。
「あなたって次会ったら殺すって言ってたのよ?忘れちゃった?」
女は男の反応など気にもとめないでそのまま喋り続けます。
「妹が離れるまでここで休みましょうか」
女は男の手をひっぱって近くのソファまで連れて行きます。
「座って」
男をソファから背を向けるように立たせたあと、その肩をぐいぐいと押しました。
何かに気がついたように男はソファにゆっくりと腰を下ろしましたが、再びぐったりと動かなくなりました。
女は一息つくと、男の隣に座ったあとその肩にもたれかかりました。
「こうすると、あなたは時々撫でてくれたのよ」
女は男の骨ばった手をとりその指を曲げたり伸ばしたりしました。
「あなたってずるい人ね」
女の耳に聞いたことのない音色が流れてきました。
どんな楽器なのかしら、と音の流れてくる方向を探るように女の耳が動きました。
あとで見に行かなくちゃ。
「あなたは私を見捨てなかったのに……あなたは私がついていくことを許さなかった」
視界の端で、見たこともない料理が運ばれていきます。
あれはどんな味なのかしら。
あとで食べに行かなくちゃ。
「ようやく、落ち着いて会えると思ったらあなたは……首がないし」
女は顔をあげて男の首を指でなぞりました。
「大変だったのよ?もう……」
女はスカートをめくり、太ももに巻きつけていた【呼霊の憑代】を取り出しました。
「これ、魂を怨恨や憎悪から解放するんですって。メーワクな魔法よね」
拗ねたように口を尖らせて女は憑代をゆらゆらと揺らせました。
「こんなもののせいで」
女は男の胸に顔を押しあてると、すすり泣くように呟きました。
「こんなもののせいで……私は……あなたを恨めずにいる……」
「ずるいわ、ずるいわ。あなただけこの世に何の未練もありませんみたいな姿でいるなんて。私だって。私だって……」
女は弾かれたように顔をあげ涙を豪快に腕で拭いました。
「付き合ってもらうんだからね。私が満足するまで。ダンスもするし、ご馳走もたっぷり食べるわ、見たことないもの全部見て回るの。あなたが歩けなくなってもひきずってやるんだから」
男は相変わらず項垂れ身動きひとつしません。
しかし、女は機嫌を良くしたようで再び男にもたれかかると、遠くテーブルに並べられた料理を見て何から食べようかと思案するのでした。
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【謳華祭】pixiv #74223571 »
二人組(pixiv #74513482 »)(pixiv #73565093 »)
■女
男を連れまわしている。ほとんど一緒にいるが、男を椅子に座らせてダンスに応じたり、ご馳走をほおばったりもする。一応男から目を離さないようにしている。生前はマナーやダンスの知識はなかったが、参加するにあたり頭にいれてきたらしい。しかし知識としてあるだけで身についていないため、体がついてこない。気をつけてはいるがいい加減。男にちょっかいをだすと怒る。
■男
女につれまわされている。ぐったりとしていてまるで抜け殻のようだ。歩いたり、座ったり、動きを示せば最低限の反応はする。自我が希薄な為か、顔の維持ができないらしい。首から上は女の記憶を頼って再現したもの。
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もしかしたら追加のラクガキをここにつっこむかもしれない(6/3)
鐘はまだ鳴るようだ